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とNfとの関係を示したものである。腐食疲労試験においても、ホットスポット応力による整理が有効である。
図3−5および図3−6から明らかなように、小型試験片と中型試験片の結果には相関性があり、小型試験結果から中型試験結果の推定が可能である。すなわち、小型試験片による試験結果を構造物の腐食疲労寿命評価に適用することの妥当性が確認できたといえよう。
一方、溶接部の疲労強度には、溶接残留応力が応力比(R)効果として影響する。ただし、疲労試験負荷応力と溶接残留応力の和が降伏点に達するような応力状態では、残留応力の影響は飽和する。図3−3に示したように、供試された3種の試験片の角回し溶接部近傍には既に降伏点に相当するような残留応力が存在しており、疲労限を越えるような負荷応力の場合には残留応力の和が降伏点に達していると考えられる。したがって、供試された3種の試験片の疲労試験結果には、実際の構造物と同等の溶接残留応力効果が反映されていると判断できる。

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図3−6 角回し溶接継手試験片(小型、中間型、中型)の疲労試験結果の比較(人工海水中40℃)

 

3.6 まとめ
応力集中、溶接形状および防食状態に関し実構造の要素を模擬した中型試験片を用いて、バラストタンクの実構造および実環境(40℃海水中)により近い条件下での腐食疲労特性に関しての知見を得るとともに、腐食疲労寿命推定法検証のためのデータを取得した。さらに、中型試験片およびこれと同様の角回し隅肉溶接部を有する小型、中間型試験片のFEM解析および溶接残留応力の計測を行い、疲労試験結果と合わせ腐食疲労寿命推定法構築のための基礎検討を実施した。
結果の概要は、次のとおりである。
1)40℃海水腐食環境中の寿命は、大気中に比べ無塗装の場合50%、塗装の場合60%程度まで低下することを明らかにした。
2)小型、中間型および中型試験片の疲労試験結果には、大気中ならびに40℃海水腐食環境中ともに相関性があり、2章で小型試験片を用いて得られた試験結果を構造物の腐食疲労寿命評価に適用することの妥当性が確認できた。
構造モデルの高温(40℃)海水中での腐食疲労試験は本研究が始めてであり、貴重な知見が得られた。しかしながら、最大繰返し数が100万回程度までであり、腐食疲労寿命推定法のさらなる精度向上のためには、さらに長時間のデータの取得が必要であると考える。

 

 

 

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